四書五経

 

中世から戦前に至るまで影響を与え続けていた中国の思想について語る必要がある。

 科挙の主要科目は四書五経であり、四書は「論語」「大学」「中庸」「孟子」、五経は「易経」「書経」「詩経」「礼記」「春秋」をいう。

「経」とは織物の縦の糸のことをいう(ちなみに横の糸のことを「緯」という)。

四書は現代でも読み継がれており、五経は宮廷での実用書の意味合いが強いので、「易経」について記したい。

易とは蜥蜴を表す象形文字で、色がすぐに変わることから、変わる、易しいなどの意味がある。起源は黄河文明まで遡り、亀の甲羅や、牛の骨に焼けた鉄を刺し、その割れ方(爻)で占いをしていた。占いをもって政をしていた。都合の悪い時や、外れた時は生贄をして、日を改めて占った。占いの結果と実際のできごとを周王がまとめ、今日の原型となった。

その過程で抽象的思考が醸成されたと考えられる。全てのものに陰と陽があり、同じように見えることでも、上っていく過程なのか、下っていく過程なのかで意味が逆となる。短期的にはこうであったが、長期的にみるとこうであるとか、歴史にあったことを解釈していった。その後も情報は集積され、科挙の主要科目となった。

 三国志正史は、魏の歴史書で、魏といっても司馬氏に王位が移ってから書かれたもので、王位の正統性を述べた書であるから、天帝思想や、易経の理屈に沿って書かれている。